りっぷたいでんはにー!
IF・おさななじみver.
ピンポンピンポンピンポン。
インターフォンの画面に映し出されたのは隣の家に住む、ハーフの幼馴染だ。生まれた時からもう十年、ずっと一緒。赤ちゃんの頃からモデルみたいな顔で、どこに行ってもずっとモテている。わたしはその幼馴染のお付きみたいな存在だとみんなから思われていて、最近は本人さえもそういう扱いをしてくる。
「…………。」
わたしは無言でモニターを見続けた。恭太は相変わらず怒った顔でボタンを連打している。…直接言いに行くことにした。
「なんか用?わたし宿題で忙しいんだけど。」
「なんだよさっきの態度は!なんでおれを無視すんだよ!」
「は?いつも外で無視するのはそっちじゃないか!どうせわたしはあんたのかっこいい顔の、ただの引き立て役だからねっ!もうほっといてよ。わたしからはもう話しかけないから安心してくださいよーだっ!じゃあね!モテモテの相多恭太くんっ!」
バン!とドアを閉めた。
…よし、ちゃんと言ったもん。もうやだ!なんでいつも女子と恭太のつなぎ役みたいなことをしないといけないの。いっつもみんなの手紙とかさ、わたしが恭太に渡さないといけないんだよ。『りこちゃんからなら捨てられないみたいだから』って、みんな、わたしを使うんだよ!
いっつも恭太は『りこはぶすだから』とか『りこは一生もてない』とか言う。『りこは、おれのぱしりにする』『おれのぱしりでありがたく思えよな』とか、わたし、恭太の家来じゃないもん!知らないよ!皆も、わたしを使わないで直接恭太に渡せばいいじゃん!恥ずかしいとかすぐフラれるのがヤだとか、わたしに相談されてもわかんないよ!
『こんなもん預かってくんじゃねえよ。まじでむかつく。どっか行け。』
今日のお昼休みに、一つ下の三年生のクラスの女子から預かった手紙を恭太に渡したらそう言われた。
わたし、ちゃんと渡す場所選んだよ。恭太が一人で廊下を歩いている時にすぐ渡したよ?
いつもみんなに囲まれているあんたが一人になるときって、ほとんどないから大変なんだからね?!
「なによ…!」
ああいう言い方なんてないじゃん!わたしはただあんたの幼馴染なだけなのにっ!!
「じゃあね、じゃねーよ!」
恭太が勝手に台所のドアから入ってきた。
「ひっ、人んちに勝手に入ってこないでよね!」
「はあ?このまえ、りこがカギを忘れてずっと泣いてた時におれが貸してやったの忘れたのかよ!」
「…それは助かったけど!そもそもなんでうちの台所のカギ持ってるの?!返して!」
恭太の手に握られているカギめがけて飛びついた。
「誰が返すか!」
恭太が手を高く上げた。わたしも高く上げる。ジャンプして、…あとちょっとで届くのに、恭太もジャンプするからなかなか掴めない。
「……。」
飛ぶのをやめた。
「…そ、そんな顔したってカギは返してやんねーからな。」
だんだん悲しくなってきた。
なんでわたしをいじめるの。放っておいてよ。
「なによ、恭太の自己中!もう消しゴム貸してあげない。教科書も貸さない。宿題も一緒にやってあげない。」
「っ?!……じっ、自己中なのはお前だろっ!毎朝迎えに来てやってんのは誰だと思ってんだよ!」
「ふんっ恭太なんかに頼んでないもん。龍がいれば起きられるもん!いいから帰って!ぶすと一緒にいても意味ないでしょ?!恭太、きらい!」
「えっ…。」
キッ、と恭太をにらんだ。
「もう絶対、このままあんたと同じ中学になんか入んないんだから!私立受けてやる!恭太のいない場所に行くんだからっ!」
涙が出てきたから、急いで拭いた。だって、こんなの恭太に見られたらまた『りこはおれだけの前だとすぐ泣くやつだ』とか言われるんだ!
「お父さんに、違う学校に行きたいって相談するんだもん!」
「そっ、そんなの聞いてねーぞ?!っていうか、き、きらい…?!」
「出てけ!ふほうしんにゅう!はんざいです!」
「りこ、おい、ちょっと…!」
手を伸ばしてきたからバシンッとはじいた。やった!いつも『ぱしりは、おれのそばを歩かないといけない』って怒られて、腕を掴まれて離してくれない。わたし、犬じゃないんだから!
「なあ、りこ、ご、ごめんな。」
「いまさら謝ってもおそいんですよーだ!出てけ!恭太のばか。」
恭太を押し出すように台所のドアに追いやった。いつも押し合いがお相撲さんの取っ組み合いみたいになるのに、今の恭太は力が全然入っていなくて、簡単に外に追い出せた。
「カギ返せ!」
「だっ、だめだ!これは絶対だめ、死んでも返さない!」
「ふんっ!じゃあいいもん。もう絶交だ!」
「っりこ、やだよ。おれ…、ごっごめんね!」
「絶交だ!」
バン!と台所のドアを閉めて、内側のカギもかけた。
ふん!見たか!家来の逆襲を!!
おわり。
――…つづきは表2.Confessions-9へ。(嘘です。笑)
このあと恭太くんがどうなって、りこちゃんにどう謝りに行ったのかは読者さまのお心の中に★
いつも素敵な応援で真里谷を元気づけて下さる読者さまへ、愛をこめて。
2016.10.11 真里谷サウス